『好き』を伝えたい
「ちょっと待てちょっと待て。」

櫻井主任に腕を捕まれ、私は引き戻された。

それでも、と足を前に進めようとすると、

「待ちなさいって、いい逃げ禁止ー」

「…見逃してくださぁい……」

往生際の悪い私に『見逃すわけないでしょ』と笑いながら
反対の腕までつかみ、主任の方を向かされた。

「まず、ありがとう」

顔をあげられずうつむいていた私にふってきた言葉は、主任らしかった。

「憧れてた、なんて言ってもらえて嬉しいよ。ホント。ありがとな」

…やっぱり、優しいな。
そうやって必ず気持ちを受け取ってくれる。
その後の言葉が『ごめん』でも、受け取ってもらえた気持ちは幸せだろう。

「…たださ、…」

言いにくそうに言葉を切り出す櫻井主任に、結果はもう見えているものだ。

だから。
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