『好き』を伝えたい
「ありがとうございます、櫻井主任。これだけで充分です。ごめんなさい、困らせてしまって…ホント、申し訳ありません」

私はまた一歩下がり頭をさげた。

そして、もう一度櫻井主任を見ると、主任は眉間にシワを寄せ難しそうな顔をしている、

最後に笑顔が見たかったなぁ、

なんて、そんな顔をさせてしまった張本人の私が言うな、
と自分に突っ込んだ。

「お元気で…お仕事頑張ってくださいね」

せめて私は笑顔で、と笑って見せたのだけど、櫻井主任の眉間のシワはそのままだった。

『それじゃぁ』と駅へと向かい、一歩歩き出すと、

「だからさ!いい逃げすんな!って言ってるでしょ?話はまだ終わってないんだよ!」

大きな声を出した櫻井主任に、ビクッとした。
だけど、振り返ることができないでいると、

「こっち向けよ」

低い声が背中をさす。

「こっち向けって、未来」

未来…?

櫻井主任の口から発せられたのは、私の名前。
しかも呼び捨て。

理解できない私は、そのまま固まってしまった。

「未来?」

優しい声がすぐ後ろから聞こえると、肩に温もりを感じ、体が反転した。
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