『好き』を伝えたい
「ちゃんと話聞いて?」

懇願するような声に小さくうなずくと、主任は安心したかのように笑った。

「確認したいんだけど…『好き』ってもう過去形?」

「へっ?」

「さっき、『好きでした』って。今は違うの?」

そういえばそう言ったけど…

「いえ!違います。『好きです!』現在進行形です!」

勢いでまた告白してしまったことに気付き、顔が熱くなる。

「ハハッ、『現在進行形』ね、ありがとう、安心した」

クシャっと音がでるような笑顔に見とれていると、

「オレね、『社内恋愛』ってどうも気がのらないっていうか、する気がなくてね」

私から視線を外し櫻井主任が話し出した。

「仕事もプライベートも一緒って重いなぁって。全部を見られるのも嫌だし、息が詰まってうまく行かないって思ってた。それがさ…。それもいいかも、って考えが変わってきてたんだ、仲村さんが派遣されてきてから」

あっ、『仲村さん』に戻っちゃった。

寂しい気持ちが先にきて、櫻井主任の言葉の意味まで理解できなかった。

「わかってないでしょ?」

苦笑いの櫻井主任の手が、私の頭をポンポンと叩く。

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