誰も知らない彼女
普段あまり食べないはずの由良が、がっつり食べたいって言うなんて。


学校で弁当や食堂の定食を食べるときは、いつも小食にこだわってるのに。


私が『これ食べる?』と聞くと、由良は『私、ダイエットしてるからもういらない』と口グセのように言っていた。


ちなみに秋帆は由良とは逆で大食いだ。


大食いタレントやフードファイター顔負けの食べっぷりを見せることが多い。


由良が『もうお腹いっぱい』と言って残したものを『いらないなら私にちょうだい』と言いながら残りものを食べはじめるのだ。


秋帆が頼もうとしているオムライスはハンバーグよりも量が多く、いくら食べることが好きな人でも食べきれない量だ。


なんて思っているうちに店員さんが座っている席の前に立ち、注文を聞いていた。


いつの間に呼び鈴を鳴らしたんだろう。


全然聞こえなかった。


私が目をしばたたかせている間に、店員さんが会釈をして去っていった。


頼むの早いな。


いったい誰が呼び鈴を鳴らして、誰が店員さんに注文したのか。


うーん、と心の中でうなりながら頬杖をついていると、突然由良に声をかけられた。


「ねぇ抹里、ドリンクなににする?」


えっ、ドリンク?


ドリンクなんて頼んだっけ。
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