誰も知らない彼女
あぁ、聞かなきゃよかった。


鏡に映った秋帆の顔がばつが悪そうに目をそらし、陰鬱なオーラで私を見ていたから。


こんな秋帆、見たことがない。


本当に私の周りはどうなっているのだろう。


恋人の死で完全にこもってしまったいっちゃんに、休んでからずっとヘラヘラ笑ってる由良、そんな由良を見て顔色を悪くする秋帆。


変わっていない私とネネとえるで、どうやって負の連鎖を断ちきることができるのか。


下唇を悔しそうに噛む私を見て、ネネが優しく秋帆の背中をさすった。


「秋帆、大丈夫? 抹里ちゃんの言うとおり、朝から顔色悪いよ? 保健室に行ったほうがいいんじゃない?」


本気で心配しているネネ。


ネネはなにがあっても秋帆を支えて仲間として動いている。


その行動に羨ましさを感じる。


グループで私みたいなあまり目立たない立場の人間がいていいのか、かなりの問題だと思う。


自分を心の中で皮肉っていると、秋帆が顔色を変えずにブンブンと首を横に振った。


「大丈夫。保健室なんて行かなくてもいい。抹里とネネに話したいことがあったからここに来たの。しばらく自分を落ち着かせるから、ちょっと待って」


これを言葉の攻撃といっていいのか。


顔色が悪いからそんなにトゲは感じないはずなのに、なぜか心に深くダメージを負っていることに気づいた。
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