誰も知らない彼女
なんで若葉が私を見て不気味に笑ってるの?


意味がわからない。


はっ! ま、待てよ。


もしかして若葉は、私が助けなかったことをずっと根に持っていたから、無理やり引っ張られている私を見て笑っているのかも。


だとしたら納得がいく。


しかし、心の中でそうつぶやいている間にも由良の私の腕を掴む力がどんどん強くなっていく。


痛い……!


由良、やめて!


「は、離して由良……! 痛いよ!」


「ふふふ……離さないって言ったらどうする?」


不気味に言葉を返してくる由良に、めまいに襲われそうになる。


今の由良は、私の知っている由良じゃない。


どうすれば離してくれるの?


涙がポロッと数滴ほど床に落ちたそのとき。


びっくりして離れていた秋帆が、私から由良を引きはがしにかかった。


「由良、やめなよ! なんでいきなり抹里の腕を掴むわけ⁉︎」


目を三角にして怒る秋帆。


怒鳴っているだけでも十分に気づくタイミングはあるはずなのに、体育担当の先生はやってこない。


それをいいことにしたのか、由良が秋帆の怒った表情に対して表情をキープした。


「なんで? そんなの決まってる。抹里がそばにいないと気が済まないからよ」


「じゃあ、こっちに来る前、なんでひとりで笑ってたんだよ! おかしいじゃん!」
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