誰も知らない彼女
「ねぇ由良、私が誰かからの視線を感じてること、秋帆たちに明日言おうと思ってる?」


『へ? そんなの当たり前じゃん』


やっぱり。


私の悩みを秋帆たちにペラペラと話すのは最初から目に見えている。


「そのときに朝丘さんが犯人じゃないかって言ったりしないよね……?」


おそるおそる問いかけるが、数秒待っても由良からの返事がない。


どうしたんだろう。


ま、まさか『なに言ってんのあんた』って言われるかも……⁉︎


次の言葉を聞くのが怖くて目を閉じると、由良の声が聞こえた。


『言わないよ。朝丘が犯人だって騒いだら、朝丘についてる女子がうるさいからさ』


それはたしかに。


数日前みたいに若葉サイドの女子との言い争いを見るのは嫌だから。


そう思う反面、由良の言葉に驚いている。


自分に火の粉がかかってこないようにするためなのはわかっている。


由良はもともとそういう子なので、由良のことを私が一番知っているはずだ。


だけど最近ではそういう要素が薄れつつある気がするから、こんなにあっさりと言うなんてことはあまりないのだ。


「……そ、そっか……」


今思っていることを言えるわけがないので、そう言うしかない。


これで、一応は解決したってことでいいのかな?
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