誰も知らない彼女
そして、由良と同じ気持ちを抱いているクラスメイトも少なくない。


「榎本(えのもと)さん。榎本さんのテスト結果が学年で2番目だって聞いたんだけど!」


若葉を嫌うクラスの女子のひとりが目をキラキラさせながら私のもとに駆け寄ってきた。


その迫力に思わず紙パックのジュースを落としそうになる。


「へ……? あー、そ、そうなんだよね。でも本当は朝丘さんを抜きたかった……」


「そうなの。すごいよね、抹里は! 学業方面は抹里がこのクラスで一番優秀だよね!」


『でも本当は朝丘さんを抜きたかったわけじゃないんだけどね』


そう言う前に由良に言葉をさえぎられた。


話しかけてきたその子も「すごいよね〜」と羨ましそうな顔をする。


まるで若葉がこの場所にいないものとしているようだ。


ふたりとも若葉が嫌いだから、若葉のことを無視しているんだ。


「い、いや、だからね……」


私より頭のいい人がこのクラスにいるでしょ、と言おうとしたそのとき。


もうひとり、またひとりと女子が私のもとに集まった。


その中のひとりは、私とちょくちょく話す仲だ。


「まったくそのとおり。やっぱり私たちが今まで言ってたとおり、抹里は賢いんだよ。あんな女はいないも同然だよ、あっはっは」


高島 秋帆(たかしま あきほ)だ。
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