誰も知らない彼女
その言葉で、私の周りにいる女子全員が一斉に笑いはじめた。


「あはは! 高島さんってば〜、それ朝丘さんに聞こえてたらどうするの〜。ははっ」


「やばい、笑いすぎてお腹が痛くなりそう……」


「ギャハハ! 秋帆、あんた一流のお笑い芸人になれそうじゃん〜?」


「そう? でも私、将来はお笑い芸人になりたくないなぁ〜」


私を囲う女子たちの笑いはおさまらない。


なんて言えばいいかわからずにキョロキョロしていると、若葉を囲うクラスメイトの何人かが私の周りの女子たちを睨んでいた。


ひ、ひぃっ!


そのうちのふたりの女子が由良と秋帆の道を通すまいとふたりの前に立ちはだかった。


「ちょっと、高島さんに八戸さん。榎本さんも頑張ったかもしれないけど、若葉だってすごい頑張ったんだからね!」


その言葉に秋帆が「ふんっ」とわざとらしく鼻を鳴らした。


「だからなに? いくら朝丘が頑張って1位になったって、べつになにもなるわけじゃないでしょ? それに朝丘、性格悪そうだし」


堂々とした秋帆の態度に若葉サイドの女子ふたりが一瞬だけひるむ。


しかし負けじと言い返そうと反論した。


「なっ……若葉は性格が悪いわけない! そう言う高島さんたちのほうこそ腹の中真っ黒そうだけど?」


「そうよそうよ! 少しは若葉の頑張りを認めなさいよ!」
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