あなたしか見えないわけじゃない
実家に戻った日は仕事から帰宅した父親と洋兄ちゃんのお父さんも合流してうちで酒盛り。

翌日は近くの温泉旅館に連れ出され、夜はまた酒盛り。

朝食後、橫浜に戻らなければいけない私たちはやっと解放された。
ゆっくりしているとまたつかまってしまうから、早々に帰宅の途につく。

帰りも洋兄ちゃんの運転だ。

「家族みたいに2泊3日ずっと一緒だったね」
「子どもが巣立って、お袋達は昔より仲良くやってるみたいだったしな」
「うん、しょっちゅう4人で飲んでるみたいだね」

「帰省してまさか一度も自宅で寝かせてもらえないとは思わなかったよ」
ホントだねぇと笑った。

帰った日、うちで酒盛りして洋兄ちゃんとご両親はうちに泊まった。
というか、ご両親はよく泊まっているらしく、うちに布団と荷物があった。
タクシーで帰ると言った洋兄ちゃんの意見は却下され、かわいそうに見事に酔い潰れるまで飲まされてしまい、洋兄ちゃんもうちに泊まった。

翌日、午後から車で45分位の所にある温泉旅館にまた2家族6人で向かい夜はまた温泉と食事を楽しみながらお酒を飲んだ。

昨夜は洋兄ちゃんと私はお酒をセーブして料理を楽しんだ。


「洋兄ちゃん、昨日うちのお母さんに何回プロポーズされてた?」

昨夜、洋兄ちゃんのお母さんが私に
「しおちゃん、もううちにお嫁にいらっしゃいよ。洋介ったらいつまでも独身で。嫌になっちゃう。しおちゃんなら歓迎するわ」と言い出した。

それを聞いた洋兄ちゃんの大ファンのうちのお母さんが「私も洋介君とホントの家族になりたい!お嫁にもらってもらいなさいよ」と騒ぎだしたのだ。

面倒になった私は「じゃ、お母さんが洋兄ちゃんと結婚すればいいじゃん。お父さんがいいって言えばね」と言ってやったのだ。

そうしたら、酔っていたお母さんはノリノリになって「洋介君、嫁はわたしでどうかしら?」としつこく言ってたのだ。
洋兄ちゃんちのおばさんやおじさんは大笑いして、うちのお父さんも笑って「よかったらどうぞ」とか言ってた。

「ナツおばさんがああなったのは志織のせいでしょ」
「えー、私のせいじゃないよ。元はと言えば洋兄ちゃんが結婚しないからー」

「あー、それか。まぁ、今付き合ってる人もいないしな」

「あれ?前に付き合ってるって言ってた人は?」

「ま、そういうことだよ」
洋兄ちゃんは気まずそうに頭をかいた。
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