あずゆづ。
それにしてもここの喫茶店……
な、なんか名前的にすごくかわいらしい店内が予想されるんだけど…!?
ゆうちゃんは、喫茶店の窓から中を伺うようにして続ける。
「ここのパフェ、食べてみたかったんだよね」
「え」
ぱ、パフェ???
パフェって、チョコレートとかバナナとかが入ったりかけられたりしている、あのパフェ?
女子が大好きなあのパフェ?
ダイエット中でも食べたくなっちゃうあのパフェ?
甘くて美味しいで有名なあのパフェ?
「もしかしてゆうちゃんて、甘いもの好きだったり……ですか……?」
まだ店内をキラキラと輝く瞳で見つめるゆうちゃんは、私の質問に対して大きく頷いた。
「うん!! でも、さすがに野郎一人で入る勇気なんてないからさ……だから梓ちゃんお願い! 一緒に入ってくれないかな!?」
私へと向き直り、私の手を離したあとゆうちゃんは自分の両手のひらをパチンと合わせて深々と頭を下げてきた。
「えええ……」
んなアホな話ありますか……?
あの『黒の王子』からこんなお願いをされる日が来ようとは、一体誰が予想できたであろうか。
というか私自身こういう可愛らしげな喫茶店とか入ったことないし、私地味だから絶対場違いだよ……っ。
そんな私が、あの黒の王子と2人で喫茶店!?
新聞部の子にでも見られてみろ、梓。
学校じゅうが大騒ぎのあげく、黒の王子ファンクラブ(前にそういうのがあるとひよりから聞いたことがある)の人達にいじめられるに決まってる。
それだけならともかく、今ゆうちゃんと一緒に喫茶店に入ってしまったら、もう二度とあのパーフェクトマッスルを拝むことが出来ない気がしてきてしまって……。
「ゆうちゃん、やっぱり私……」
そこまで色々と考えて、ゆうちゃんのお誘いをまたも断ろうとした時。
―――キュルルルル……
「「あ」」
しまった、私のお腹が!!
どんなに言葉を並べても、こればかりはごまかしきれない。
だって盛大な音だったもの。
「ぷ……っ」
少しして、ゆうちゃんは噴き出して笑った。
「梓ちゃんもお腹すいてるんだね」
「あ、いや…その!!」
「じゃ、行こっか!!」
「ちょっと、待ってってば~!!」
私の言葉なんて聞いてもらえるはずもなく。
掴まれていた腕を力強くぐいっと引っ張られ、私とゆうちゃんは『うさぎの小屋』へと足を踏み入れたのだった……。