あずゆづ。

「お願いがあります」

「んだよ」


1度、大きく息を吐いて、吸って。

閉じた目を開けて、まっすぐゆづくんを見る。


「す、スケッチさせてください……」

「は?」


このとおり!!!

そう言いながら、私は頭を地面に埋める勢いで下げた。


「………しゃーねえな、少しだけだぞ」


少しして頭の上から、ため息と共に聞こえてきた了承の声。

え、少しだけって言ったけど……

いいってことだよね?!


さあ!俺の筋肉を思う存分スケッチしろ!!

ってそういうことですよね?ゆづくん!?



私はゆづくんの言葉をやっと理解し、ばっと顔を上げる。

そしてゆづくんの両手をつかみ、目をぱあっと輝かせて精一杯のお礼を告げた。


「ありがとう!!!!」


ゆづくん、口は悪いけどファンに対しては神対応すぎません!!!?


1秒でも惜しい私は、背負っていたリュックを勢いよく(それはもうチャックが壊れてしまいそうな勢いで)開け、スケッチブックと鉛筆を取り出す。

そんな私を、目をまん丸くして見ていたゆづくんは、私の勢いに圧倒されたように小さな声で聞いてきた。


「お前、それいつも持ち歩いてんのか?」

「もちろん!! どんなゆづくんも描き逃すことのないよう常備してるよ!!」


ゆづくんたら!!
何を当たり前なことを!!!


「………」


私の言葉を聞いたゆづくんは、片手で頭を押さえてうなだれる。

それから大きな大きなため息をついた。


「……ばっかじゃねえの…」


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