あずゆづ。

「………オイ」


ゆづくんの声で、はっと我に返る。


「描くんじゃねえのか。なにぼーっとしてやがる」

「…………」


ゆづくんの言葉を理解するのに、少し時間がかかった。


「……はっ!!!?」


い、いけない!!

ゆづくんの筋肉をこんなに間近で見ながらスケッチできる機会なんてそうそうないはずなのに!!!


私としたことが、ついついゆづくんに見惚れてしまっていた!!


「………」


見惚れて……た??

私が?

筋肉以外のものに……見惚れてた???


「………んだよ」


私、ゆづくんに……見惚れてたんだ。


今まで本当にゆづくんの筋肉しか見てなかったから

こんなに近くで見てて、

瞳の色とか、髪型とかだけじゃなくて。



口は悪いけど、意外と優しいところとか。

鬼の形相はすごくこわいけど、ぼーっとしているところは意外とかっこいいところだとか。


気づかなかったこと……気づけなかったことがたくさんあって。


「な、な、なんでもない……です」


あ、あれ、おかしいな。


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