あずゆづ。
「……二人とも、そんなとこで何してるの」
「「!?!?」」
急にかけられた声に驚いた私たちは、お互いにズサササッと離れた。
「あ、ごめん、もしかして邪魔しちゃった?」
声がした方をそっと見れば。
「………あ」
その声の主は、私たちの傍にあった木の影から、申し訳なさそうな表情をしながらひょっこりと顔を出していた。
その声の主とは。
「……ゆうちゃん……??」
「こんにちわー、梓ちゃん」
黒の王子、ゆうちゃんだった。
ゆうちゃんは、まだ申し訳なさそうに眉毛を下げて微笑んでいる。
場を和まそうとしているのか、私の方へと手をひらひらと振ってきていた。
しかし私は、なかなかこの状況についていけずただひくひくと頬をひきつらせることしかできなかった。
え。え。
……え!?
なにこの状況……!?
なんでこんなところに黒の王子がいるの!?
なんでゆうちゃんが、こんなところにいるの!?
そんなゆうちゃんは、ひらひらと振っていた手を下ろし、1度目を閉じふうと息をひとつ吐いたあと。
「……ま」
もう一度目を開け、私とゆづくんを交互に見てから、くすっと笑っては、木の影から出てきた。
そのいたずらっ子のような、それでいてクールな笑みが、クラスの王子たる所以だ。
黒の王子とはよく言ったものだと、この笑顔を見るといつも思う。
……って、いまはそんなこと思ってる場合じゃないでしょ! 私のバカメガネ!!
「わざとだけどね」
木の影からでてきたゆうちゃんは、私の目の前に立つとそう一言こぼしてから。
「ふぉおっ!?」
突然、ゆうちゃんに腕をつかまれたと思ったら、そのまま強引に引っ張られ、簡単にその場に立たされる。