あずゆづ。

ゆうちゃんの、さっきの笑顔がふっと消えたと思ったら、つらそうに顔をゆがませた。

そんな悲しそうな表情のまま、下を向いてしまった彼を見て。

突然、ふと頭の中に浮かんできた。


『王子が一番かわいそうね』


さっき教室で、ひよりに言われた言葉を思い出した。

それもあってか、なんだか胸が少し、痛んだ。

なんでかはわからない。

ゆうちゃんがどうしてかわいそうなのかも、よくわかっていない。

けど、目の前で下を見るゆうちゃんを見て、チクチクと胸が痛んだのは確かだった。


それで、どうしたらいいのか。

今自分がどうしたらいいのかなんてわからなかったけど。



「ご、ごめんねゆうちゃん……」



何か言わなければと開いた口からは、思わず……それこそ反射的に、そんな謝罪の言葉が出てきたのだった。


そうだ、そうだった。

ゆうちゃんは、こんなバカみたいな私なんかのこと好きって言ってくれたんだったな。


そんな、仮にも好きって言ってくれた人に……

申し訳ないことをしたなって。


ここまでバカな私でも感じたんだ。


「……返事、もう少し待とうと思ったんだけど」


私の言葉を聞いたゆうちゃんは、そっと顔を上げたかと思うと、黒い瞳が私を捉えた。



「……っ!?」



行き場のなかった私の両手首をつかまれ、そのまま体ごと壁につけられる。

……これが世の人々が言う壁ドンか!?


「ゆ、ゆうちゃん……?」

「梓ちゃんごめん。……今、返事聞きたい」

「ヘンジ……!?」



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