あずゆづ。

呼び止めることなんて、できるわけなかった。


「……っ」



なんで、こうなったんだろう。


なんで、あんなにつらそうな顔してたんだろう。


なんで、追いかけられないんだろう。


なんで、体が動かないんだろう。


なんで、こんなに胸が痛むんだろう。



「……ゆづくん……」


小さく小さく名前を呼んでも。

いつもみたいにぶっきらぼうに振り返ってなんてくれない。


ゆづくん……ゆづくん……。


なんで、振り向いてくれないの…???



胸が痛くて、ズキズキって痛くて。

体が震える。

指先がどんどん冷たくなる。

そうして、体まで冷えてきてるはずなのに、背中にはじっとりと汗をかいている。


力は抜けて、その場に座り込んだ。


この状況……もしかしなくても……

私、ゆづくんに、嫌われちゃった……ってこと?


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