過保護な騎士団長の絶対愛
 ここまで父、モリスを怒らせたことはなかった。この怒りが、自分に向けられているものだと思うと胸が痛い。

「ララ、お前は正気か? 本気でそのようなことを言っているのか?」

「はい。父上、それに男は心だ、と言ったのは父上ですよ?」

「くッ――!」

 思いもよらぬララの言葉に、今度はモリスが絶句する。

 するとその時。

「お待ちください!」

 バンッ! と扉が勢いよく開いて、ララは驚いてその方を振り向いた。

「ユリウス!?」

 突然のことにモリスも、開かれた扉の方を見て目を丸くしている。つかつかと踵を足早に鳴らしながらユリウスがララの元へ歩み進むと、ユリウスは表情を一切変えずに頭を垂れた。

「モリス様、突然の無礼、どうかお許しください」

 何度見ても、そのしなやかな所作、悠然としたユリウスの姿にララは見とれてしまう。モリスはそんな娘にコホンと咳払いをした。

「なんの用だ? お前をここへ呼んだ覚えはないぞ」

 ララの言葉ですでに困惑していたモリスは、ユリウスの登場によりややこしくなったと苛立ちを含んだ口調で言った。

「畏れ多きことですが……」

ユリウスは、静かではあるが緊張を孕んだ表情になる。

「我が娘は、王位継承権を放棄してまで、お前と添い遂げたいと、そう言っているが?」

 ユリウスの身分で、ララに結婚を申し込むということは、場合によっては斬首刑に課せられる。だからユリウスには考えがあった。彼はなんの迷いもなく顔をあげると言った。
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