過保護な騎士団長の絶対愛
 夜の庭園は静かで、楽器を奏でる音や人の談笑の声などが遠くから聞こえてくる。


「コルビスの城の庭園はよく手入れされていて、綺麗に花が咲いていますね」


 月の光を受けると、庭園も昼間と違った印象を受ける。

「あぁ、まだあなたのお名前をお伺いしておりませんでした。お尋ねしても?」


「アメリア、です」


 自分の名前ではない名前を名乗るのはどうもぎこちない。


 薔薇のアーチをくぐると、花の甘い香りがどこからともなく漂ってくる。ララは思い切りその香りを吸い込むと、一気に肺に空気が入り込んで思わず咳き込みそうになる。


「はぁ、とても落ち着くわ、本当は私、ああいう場はあまり好きではないの」


「そうだったんですか、ではタイミングがよかった、ということですね、実は私も賑やかな場所は苦手なのですが、風の噂でコルビス王国で舞踏会があると聞きまして、遥々サーラン山脈を越えてやって参りました」


「え、サーラン山脈……」


「えぇ、私の本職は商人でして、色々な国を回っているのです」


 サーラン山脈は、コルビスの北に位置する山脈で、その向こう側にはまた違う世界が広がっていると聞く。
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