過保護な騎士団長の絶対愛
「失礼します。ユリウス様、もしかしてこちらにララ様がいらっしゃいませんでしたか?」

「いえ、見てませんが……」

「そうですか、わかりました。もう、どこ行っちゃったのかしら……あ、失礼します」


 そんな会話のやりとりを、ララは机の下で固唾を呑んで窺っていた。ドアの閉まる音がしてもすぐには出ない、万が一「あ、そうだ!」とか言いながら侍女が戻ってきたらやり過ごせたのも水の泡だ。


「いつまでかくれんぼをしているおつもりですか? そんな用心深くしなくとも、もう行かれましたよ」

「よかった!」

 もう十八歳にもなるのに、ララはいつまでも子供のように無邪気だった。ララは頭をぶつけないようにしながら机の下から這い出ると、ふぅっと息をついた。


見ると、ララは腰で絞ったブルーのチュニックに黒のレギンス、そして革のブーツといった至って簡易的な服装をしていた。それを見たユリウスはすっと目を細めた。

「今日はシールア王国の王子、ユダ様とお見合いの日だったのでは?」

「え、えぇ……」

「それにしては不適切な格好をしているようですが?」


 そしてなぜここにいるのか?と聞かなくても、ユリウスは大体の見当はついていた。ララをじっと見つめると、ララは気まずそうに目を泳がせた。
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