王太子殿下は無垢な令嬢を甘く奪う
 さすがのマリーにも、フレイザーが何を考えているのかがわかった。

 この小さな国の蓄えた武力で、他国をも侵略しようとするのがフレイザーの考えだったのだ。


「そして、大国になった国の王として君臨するのは、この私だ」

「フレイザー……貴様には心底失望する。兄のようだと慕っていたことも、幻想だったのかと思うよ」

「何とでも言えばいい。欲するものが手に入らないであれば、もう何もいらぬ」


 大きな溜め息を吐いたウィルに、フレイザーは悪びれもせずに口の端を上げて嘲笑った。


「処分は追って決する。ひとまずは離れの塔に連れて行け。武器の一切、針の一本も持たせるな」


 ウィルの堂々たる指示に「御意!」と声を揃えた護衛達が、フレイザーを羽交い絞めのまま連行する。

 大人しく去る黒い背中に、マリーはようやく強張っていた肩の力を抜くことができた。


「マリー」


 足腰に力が入らず、ミケルに支えられたままのマリーに、ウィルが歩み寄ってきた。


「ウィル」


 跪き目線を合わせてくるサファイアの瞳に、溢れる安堵と愛おしさが涙を連れてきた。

 支えてくれていたミケルの腕から解かれると、身体が吸い寄せられるようにウィルの胸へ飛び込む。
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