王太子殿下は無垢な令嬢を甘く奪う
 大公爵家が持つ資産、土地は、全て後見人に委ねられるか、引き取り手がなければ競売かもしくは公爵以下の貴族に分配される。

 つまり、これまでの裕福な生活はできなくなるということだった。


「エルノア」


 絶望するエルノアに、ウィルが優しく声をかける。


「ライアンのことは、どう思っている?」


 さっきも聞いたウィルの友人だという人の名前に、エルノアはぴくりと肩を揺らした。


「ライアンは君のことを心から想っている。たとえ結婚は出来なくても、その気持ちは変わらないと言っていた。
 ……エルノア、さっきの言葉は聞かなかったことにする。そしてもう一度聞く。
 ライアンのことはどう思っているんだ?」


 エルノアは真っ赤に染まった顔を覆い、さらに声を上げて泣き出してしまった。


「とても……とても優しい人よ……っ。わたくしが、ウィリアムとの結婚を望んでいると知っても、それでも愛していると言ってくれたわ……っ」


 エルノアの言うことにマリーは既視感を覚えた。
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