王太子殿下は無垢な令嬢を甘く奪う
「ミケル、エルノアに迎えを用意してくれ」


 このまま晩餐会の場へと戻ることは難しいと察したウィルは、ミケルにエルノアを任せる。

 力なく立ち上がりながらも、彼女の向こうには幸せの光が見えたような気がした。


「さあ、マリー」


 エルノアを見送ってから、静まり返った廊下でウィルが空気を切り替えるように朗らかに言った。


「心の準備はいい?」

「え」

「まさか、今さらこの話はなかったことになんて、言うつもりはないだろうね」

「えっと、あの、なにを……」

「国王には、これから謁見の時間を取ってもらっている。未来の王太子妃を待ってくれている。
 それに、今夜婚約者の発表をすることにしていたのは事実だし、世間でももっぱらの噂だ。その期待に応えようと思っている」

「ま、待って、ウィル!」


 まさかこんなことになるとは、夢には見ても、現実になるとは露ほども思っていなかった。
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