王太子殿下は無垢な令嬢を甘く奪う
*


 王城の最奥の部屋は、多少歩かなければならないほど距離があった。

 そこに着くまで時間がかかったはずなのに、緊張と混乱に襲われるマリーには、あっという間だった。

 国王への挨拶をまとめられないまま。

 扉の両側に立つ護衛のふたりにウィルが片手を挙げると、すんなりと中へ通される。

 普段からよく出入りしているからか、それとも元々話をするように伝えてあったからなのか。

 王家とのかかわりどころか、外の世界に出てきたのもここ最近のことなのに、マリーの中では展開が飛躍しすぎていて目が回りそうだ。

 ウィルの部屋とは違い、壁にはびっしりと書物が詰め込まれていて、広いはずなのに少し圧迫感がある。

­­­­その圧にも負けない威厳を醸す人が、星空の見える窓を背に置かれた大きな机についていた。
­­­

「ああ、来たか。待っていたぞ、ウィリアム」


 部屋に入るなりウィルが軽く低頭すると、朗らかな中にも厳粛さを持つ声が彼を歓迎した。
< 202 / 239 >

この作品をシェア

pagetop