王太子殿下は無垢な令嬢を甘く奪う
「マリーアンジュ」


 厳かな声に呼ばれ振り向くと、国王は柔和な表情をすっと引き締めた。


「申し訳ないが、イベール家のことを調べさせてもらったよ」

「は、はい」


 当然のことだろう。

 王家に嫁ぐとなれば、家柄の良し悪しを見られるのは致し方ないことだ。

 けれどマリーはここに来て、両親が自信をもって娘を鼓舞していたことを感謝することになる。


「イベール家の領地の農民達からの評判もいいようだね。統率も取れていて、領地内の治安も安定しているとのことだったよ。
 君の父はとても真面目で信頼に足る人物だと見受けた」

「お褒めの言葉、ありがとうございます」

「母も人脈が広く、そして人望に熱い方らしい。周りの婦人達の相談役として、イベール伯爵の名に箔を付けていると聞いた。
 とても素晴らしい両親を持ったね、マリーアンジュ」


 両親が周囲からそんなふうに見られていたとは知りもしなかった。
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