王太子殿下は無垢な令嬢を甘く奪う
「マリー」

「ウィ……」


 呼びかけられたかと思うと、たちまちに奪われる口唇。

 たくましい掌に首の後ろと腰を抱えられ、ウィルとの距離が無くなった。

 外からの目は一切感じない密室で、ふたりの吐息が熱を上げる。

 付いては離れてを繰り返す口づけは、車輪の喧騒にまぎれて、遠慮なく甘ったるい音を鳴らす。

 室内にこもる熱量は、マリーの思考をとろとろに溶かしていく。

 それまでよりもずっと深くなる口づけに、マリーは口唇の隙間から甘い声を漏らした。

 重なった部分が名残惜しく離されると、ウィルはマリーを強く抱きしめた。


「マリー、君のあの言葉は、本当に堪らなかったよ」

「えっ?」


 ぎゅっと一度力を込めてから緩められた腕。その間からウィルを上目づかいに見る。

 軽くついばむような口づけをもらい、見つめ合うのが恥ずかしくてウィルの肩に額を預けた。
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