王太子殿下は無垢な令嬢を甘く奪う
「俺と一緒じゃないと生きられない、だったか?」

「少し違う気もするけれど……ウィルが自分の気持ちを素直に伝えてくれればいいって言ったから、思っていることを伝えただけよ」


 マリーの後ろで、ふわふわの金の髪を弄んでいた長い指がぴたりと止まる。


「君は本当に、俺の心を惹くのが上手らしい」

「えっ? 私は何もしてないわ」


 小さくかぶりを振ると、ウィルはくすりとはにかむ。


「無自覚なところがまた狡くて、君の蠱惑的な魅力に拍車をかけてる」

「そ、そんなつもりは……」

「俺と一緒にいろんな世界を知りたいんだろう?」

「……うん……」

「君に初めての世界を見せるのも連れて行くのも、俺でないと許さない」

「私も……いろんなことを教わるのは、ウィルからじゃないといやだと思っていたの」


 耳元で大きなため息を聞いたかと思うと、耳朶に温かな口唇を感じて肩をすくめてしまった。


「好きだよ、マリー。可愛い、愛してる……何を言ってもこの気持ちに足りる言葉が見つからないよ」


 耳の下に口唇を這わされて、マリーはぞくぞくとした感覚に、火照った吐息を飲み込めなかった。


「ウィル、私も……私も……」


 マリーも必死にウィルへの想いを告げようとしたけれど、イベール家の屋敷に着くまでずっと、ウィルの熱に当てられっぱなしで口にできなかった。

 会うたびに濃厚になっていくウィルの甘い行為に、頭も身体も心もふわふわにのぼせ上がった。



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