王太子殿下は無垢な令嬢を甘く奪う
「一体どんな顔で、またのこのことやって来られたのですか!?」


 エレンは、当然ウィルが王太子だとは知りもしない。

 ウィルに対しての厳しい態度は、今もまだ継続中だ。

 彼女の罵声に、ミケルがわずかに片眉を上げた。


「お嬢様はもうすでに婚約を取り付けている身です! それなのに貴方という人は性懲りもなく……!」


 お腹の前で結んでいた拳を震わせるエレンに、マリーはそっと近づいた。


「エレン、話を聞いてほしいの。お父様もお母様も、まだ起きていらっしゃるかしら」

「一体何をお話するというのですか!? フレイザー様はどうなされたのです!? なぜご一緒にいらっしゃらないのですか!?」


 ウィルがマリーをフレイザーから奪おうとしているとでも思っているのか。

 彼を見てからのエレンの気の動転具合に、マリーは落ち着かせるように彼女の手に優しく触れた。


「フレイザー様は、お出でになられません。婚約の話は、白紙になりました」

「な、なんですって……っ!?」


 エレンは悲鳴のような声で驚いた。
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