王太子殿下は無垢な令嬢を甘く奪う
「だ、旦那様を呼ばないと……っ。い、いえ、それより先にこの輩を騎士団へ……ああ、でも今からどうやって連絡をすれば……」

「エレン落ち着いて。話を聞いて」


 エレンの動揺は、マリーには痛いほどわかる。

 念願叶って、大公爵家への嫁入りができるところだったのに。

 いきなりそれがなくなってしまっただなんて、マリーにだって展開が早すぎてまだ現実を掴めていない。


「わたくしは落ち着いております!! その輩が、お嬢様に何かよからぬことを吹き込んだのでしょう!?」

「エレン! またそんなことを……!」


 ウィルへの嫌厭の感情を無遠慮にぶつけるエレン。

 落ち着かせようとするマリーの手を振りほどいて、エレンは屋敷へと慌てて引き返した。


「ごめんなさい、ウィル……」

「いや、仕方のないことだ。俺が今までエレンさんに心配を掛けていたことの報いだ」

「殿下、私は早く事実をお伝えしたくて仕方ありません」


 ミケルの強張った表情に、主を愚弄されることが我慢ならない様子がうかがえた。

 マリーは申し訳なく思いミケルにも頭を下げる。
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