王太子殿下は無垢な令嬢を甘く奪う
 息苦しいのは呼吸だけではない。

 愛する人に愛されていると実感しているこの胸だ。

 角度を変え深さを変え、丹念にマリーに口づけを施すウィルに、次から次へと愛しい想いが引き出されて止まらないのだ。


「ウィ、ル……っ」

「マリー、愛している……愛している」


 ウィルもまた、マリーへの愛が溢れて止まらないようだ。

 もう口唇がぷっくりと腫れてしまいそうなほどの口づけに、彼の想いの熱量を感じる。

 自分はこんなにも幸せでいいのかと、泣きそうになるほどだ。


「早く、マリーの花嫁姿が見たい」


 マリーを組み敷いたまま、ウィルはサファイアの瞳を揺らめかせて囁いた。


「もうドレスの採寸は済んだろう? いつ頃仕上がる予定?」

「お直しまで考えたら、二ヶ月ほどですって」

「待ち遠しすぎるよ」

「私も……」


 ただベッドの上でごろごろと抱き合いながら、見つめあっては口づけを交わし、愛を囁きあう。

 これがマリーが王城に来てからのふたりの日課だ。
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