王太子殿下は無垢な令嬢を甘く奪う
「図星か、面白い。なおさらお前を手に入れたくなった」


 ふんと何やら楽し気に笑うフレイザーに、マリーはどきりと胸を大きく鳴らす。


 そうよ、私はウィルのことが、好きーー。


 はっきりとした言葉で気持ちを表すと、ますますその想いが確かなものへと象られていく。

 今まで以上に彼に会いたいと思うし、これから先も彼のそばに居たいと思う。


「今の続きは、我が屋敷に迎え入れてからたっぷりと味あわせてやる。楽しみにしているといい」


 けれど、ウィルへの想いを急激に膨らませるマリーに、フレイザーは冷たい刃を突き立てるように言い放つ。

 マリーを花嫁と決定づけたような物言いだ。

 まるで、マリーとウィルとの繋がりが、フレイザーの何かに触れたような雰囲気が言葉端から伝わってきた。
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