王太子殿下は無垢な令嬢を甘く奪う
* * *


 ウィルは、真新しい純白のジャケットに袖を通し、仕立て屋によれやほころびがないかを確認してもらっていた。

 まもなく城で開かれる、ウィルの成人式典で着る衣装合わせだ。


「ウィリアム様」


 ノックをしてから衣装の並ぶ部屋に入ってきたミケルを、ウィルは鏡越しに目線だけで見やった。


「フレイザー公が謁見に来ております」


 あまり好意的ではない声音のミケルに、ウィルはかすかに目元をしかめて溜め息を吐いた。


「また自慢話でもしに来たのか? まあいい、通せ」

「御意」


 元着ていた服を着直し仕立て屋を下がらせると、ミケルに扉を引いてもらったそこから、フレイザーがいつものいやらしげな顔で現れた。
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