通学電車、下車後。
ザアアと風が吹き、髪がバラバラと乱れる。
織田君の短めの髪も、風を受けてる。
目を細めてる顔もすてきだ。
「…風つよっ」
「そうだね、天気はいいのに……」
「家までどうやって帰ってんの」
「自転車だよ。自転車置場はちょっと遠いんだけど、乗らなきゃもっと遠いし」
「じゃあ、送っちゃる」
えっ…
目をまんまるにする私に、織田君は頷く。
風を切って、太陽の光を受けて、坂道を下る。
憧れの、好きな人とのふたりのり。
怖いから織田君にしがみ付いてるけど、風が気持ちいい。
「わ、あーー!きもちいーい!」
「声でけっ」
だって、すごいよ。
いつもの景色がキラキラしてるし、アイロンのかかった織田君のシャツを掴んで、後ろから抱きしめてて。
こんなゆめみたいなこと、ないよ。