君のために未来を見よう〜教王様の恩返し〜
「じゃあ、どうしてバルト先生が?」
「……私の口からは……」
「僕にも言えないこと?」

ツタにからまれた感覚だった。体に巻き付かれて身動きが取れない。
心配してくれているのか。それとも、単なる好奇心なのか。 
アルベールに対して初めて抱く嫌悪感に心が締め付けられる。

レイ様はどうされているだろう。
早く部屋へ戻りたい。お側で看病したい。

「アルベール様。私、そろそろ戻らないと」
うつむいて、アルベールの横を通り抜けようとする。

「ちょっと待って」
アルベールが手首を強くつかんで、フィーの体を引いた。足がよろめき、壁に軽く衝突した。
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