君のために未来を見よう〜教王様の恩返し〜
小さい頃、スカートの裾が跳ね上がるのを見かねた母親から度々注意を受けたことがあった。

こんな時にまでそれが頭をよぎる自分に苦笑してしまう。
優雅に揺れるスカートは、世間の噂をはねつける壁にはならなかった。

(ごめんなさい、お母様)

カドラスの執務室を力強くノックする。

「開いている」

普段と変わらない抑揚のない低い声。
それがさらに気持ちを荒ぶらせた。

中に入ると、カドラスはフィーを一瞥し、また書類に目を落とした。

「なんだ」
「急で申し訳ございませんが……」
声に何かを感じ取ったのだろうか。カドラスが顔を上げ、フィーの言葉を待った。

「レイ様のお世話係を辞めさせて頂きたいのですが」
一瞬、カドラスの目が見開いた気がした。

「……管轄外だ」
少しの間があってからそう答えた。
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