君のために未来を見よう〜教王様の恩返し〜
「やるとか辞めるとか、私が決める問題ではない。そういう話しは教王としてくれたまえ」
「え?」
「君を指名したのは教王だ。私には関係のないことだ」
言葉が出てこない。

「……そもそも。私が人選を任されたとして、君を選ぶと思うか?」
失礼千万な言い草だが、怒りの矛先を見失った動揺でそれどころではなかった。

「……レイ様が……」
「用が済んだのなら、退出したまえ」
「……申し訳ございませんでした。失礼いたします」
深々と一礼し退室した。

カドラスの部屋から自室へ向かう。
落ち着いて頭を整理したかった。

部屋のベッドに腰をかけ、これまでの事を振り返ってみる。今までずっと初対面だと思っていたのに、彼は自分を知っていた。
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