君のために未来を見よう〜教王様の恩返し〜

その瞬間、フィーは息をのんだ。

そこにいる人々の雑多な音や動作が一瞬にして停止し、食堂が一枚の絵画になったようだった。
生きていることを知らない人形のように、誰も動かない。
音もない。
一様にただこちらを見つめている。

レイが軽く手を上げ、「邪魔するよ」と声をかけた。
すると、命を吹き込まれた人間が次々と膝をつき深く低頭し始めた。
恐れ多くて誰も頭を上げようとしない。

「ちょっと食事に来ただけだから。俺たちの事は気にしないで」

そう言われて、『わかりました』となるはずもないのだが、教王らしからぬ気さくな物言いと態度が人々の心をほぐした事はフィーにも容易にわかった。