君のために未来を見よう〜教王様の恩返し〜
レイは周りの反応を気にもせず、配給係の高齢の女性の前に立った。

「バーラだよね? いつも、アデラ様の犬にエサをくれてただろ? 余った肉とか魚をこっそりさ」
「え!?……あ、あの、ど、どうしてご存知で……」
「一度、礼を言いたかったんだ。すごくおいしかったよ、ありがとう。……まさか、こんな形で礼を言えるなんて思ってもみなかったけど」
「と、とんでもございません! あの……もったいないお言葉でございます」

緊張と感動で高揚しているバーラを見つめつつ、
「今日は鶏肉のシチュー? おいしそうだね。オマケしてたくさん盛ってよ」
軽口を叩く。

「はい。大盛りにさせていただきます」
バーラも嬉しそうにシチューをなみなみよそった。

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