恋する病棟、24時
慌てて返事をすると彼は表情を変えずに続ける。
「今から回診お願いします」
「は、はい! 直ぐ準備します!」
腰を上げて目の前の書類を集めていく。
すると隣で真夜がニヤニヤと口元を緩めて告げ口してくる。
「氷川先生に見惚れて仕事疎かにしないでね」
「……」
五月蝿いな!!
午後からは患者の検査があるので氷川先生は午前中に入院患者さんの回診で病室を回る。まさかこのタイミングで付き添う事になるとは思わなかったけど。
「じゃあ次心拍数計るのでジッとしてください」
彼の低い声に二十代後半の女性は小さく「はい」と漏らす。そりゃこんなに格好いい先生に診てもらったら緊張もするしドキドキするよね。
特別顔がいい氷川先生は女性の患者さんから大人気で、彼が回診にすると大抵みんなが恋する乙女の表情になる。そんな彼女たちに対して全くのポーカーフェイスを崩さないのが彼なのだけど。
「何処か体の調子で気になるところは?」
「最近体が少し怠くて」
「そうですか、薬の副作用かもしれないので何かあったらすぐ呼んでください」
「はい、氷川先生を呼びますね!」