恋する病棟、24時
まさかの名指し、ここはホストクラブか。
しかしそんなあからさまなアタックにも動じないのが氷川先生だった。
「西原さんのお陰で随分早く終わりました。ありがとうございます」
「い、いえ! そんなことは」
スタッフルームに戻る間、私がそう答えると彼がこちらを振り向く。
「そんなに遠慮しないで、褒めてるのに」
「あ、ありがとうございます。ありがたきお言葉です」
しまった、意識し過ぎて普通の日本語が分からなくなってくる。
そんな私に彼はクスリと微笑んで目を細めると、ゆっくりと腕を伸ばして私の頭をポンポンと叩いた。
「また後で」
「っ……」
そんな甘い言葉が落とされる。気が付いて顔を上げた時には彼は私に背中を向けていた。
平気な顔をしてとんでもない爆弾を落としていく。私の恋人はどうやら策士らしい。
せっせと午後の仕事を終わらせていると真夜や貴美子が声を掛けてくる。
「一花今日当直でしょ、そろそろ休んだ方がいいよ。夜まで身が持たないし」
「ありがとー、この仕事終わったら仮眠室行くよ」
「なんか面倒臭いのあったらこっち回してね」
周りの声掛けのお陰で何とか仕事を終えると夜の勤務に向けて体を休ませる事にする。その間にも氷川先生のことが頭の中をぐるぐる巡っていた。