恋する病棟、24時
きっと彼があんな風に笑うのみんなは知らない。あんなに優しく人に触れることも。
視線で、指で、言葉で、彼が本当に私を大事にしてくれているのが分かる。
だからこそ、彼が私を好きになってくれた理由が分からないことにモヤモヤする。だってこんな事になるまで私と氷川先生の間には交流のこの字もなかった。
「(お酒の力って凄い)」
だってこんな展開を生んでしまうのだから。でも飲み過ぎには注意をしよう。
仮眠室を後にすると再び病棟へと戻る。面会時間も終わり、必要な電気しか付いていないからか病棟は少し閑散とした雰囲気だった。
一つ一つ病室が暗くなっているのを確認しながらスタッフルームへと戻る。
と、
「え」
その入り口で思わず足が止まる。中にいた氷川さんがその声に気が付いて顔を上げると私と目が合った。
もしかして氷川さんも今日当直なのかな。ていうことは今からずっと二人きり?
だからさっき「また後で」って言ってたんだ!
「お、お疲れ様です」
「お疲れ様です」
そそくさと席に着くとシンとした空気が流れる。
まさか氷川先生がいるなんて、顔を机から上げるとまた目が合う。
「よく眠れましたか?」
「はい、それはそれはぐっすり」