恋する病棟、24時
「可愛い人ですね」
「っ……」
その瞬間、ナースコールが部屋に響き渡る。我に帰った私は目の前の体を思い切り腕で押して彼から離れた。
彼の顔は相変わらずのポーカーフェイスで、
「う、上野さんかな? またトイレかもしれないので私行ってきます!」
「あ、」
スタッフルームから飛び出すと顔の火照りを冷ますように廊下を駆け抜けた。
普段から想像出来ない彼の表情だとか声が未だに瞳や耳に纏わり付いているみたいだった。
『可愛い人ですね』
あんなの、どうやって対処するんだよ。
朝になると通常勤務の人たちが出勤してくる。
塩野先生は私の顔を見るなり「お?」と、
「なんかスッキリした顔してるね。眠たくなかった?」
「……いやぁ」
あれから氷川先生と二人きりなのを意識したら眠いどころじゃなくて、むしろ目が覚めてしまった。仕事的にはそれでいいのだけど。
仕事の引き継ぎを終えて漸く当直の勤務が終わった。この後は一日お休みをもらえているので家に帰って一度ベッドで寝ようと思う。
服を着替えて従業員入り口に向かうと一昨日と一緒で氷川先生が立っていた。
「送ります、行きましょう」