恋する病棟、24時





彼が言うようにその知穂という女性は誰から見ても美人で、氷川先生と隣に立つとそれはそれは絵になった。
彼女は私たちに気が付くと「あ、ごめんなさい」と笑顔を浮かべる。


「ついつい話に夢中になっちゃって。外科医やってる種崎知穂です。あんまりここには来ないから初めましてかな」

「種崎? あぁ、女性で凄く敏腕の外科医の方がいるって有名ですけど貴女のことですか! あえて光栄です」


彼女の存在に気が付いた塩野先生が握手を求めるも何の躊躇いもなく「よろしくね」と手を差し出した。


「中身は面倒臭いけど腕はいいから」

「それ、そのまま司に返してもいいかしら?」


そんなことより、と彼女は持っていた資料を氷川先生に突き付ける。


「新しく入る入院患者さん、ちょっとややこしいところあるから引き継ぎに来たのよ。時間いい?」

「分かった、診察室で聞く」


種崎先生に背中を押されてスタッフルームを後にする彼を見送ると少しだけこちらを心配そうに振り返った。
私はそれに軽くお辞儀をすると隣で塩野先生が顎を触りながら呟く。


「なーんか、あの二人臭うな」

「に、臭うって」

「男と女の匂いがする」


そう言って彼は「じゃあカンファレンスするか」と背伸びをした。
そんな言葉を言い残していくのは狡くないですか?





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