恋する病棟、24時



心に余裕が欲しくて氷川先生と付き合い始めた。実際に仕事で何か嫌なことがあっても氷川先生の顔を見れば癒された。
なのに今、私は彼のことで余裕がなくなっている。それって付き合っている意味がなくなったってこと?

違う、私は本当に氷川先生に恋してしまったんだ。


「松来さん、またご飯食べてないって聞きましたよ!」


カーテンを開けるとしわくちゃの怖い顔が出迎えた。テーブルの上の病院食はまだ手が付けられていないのか、提供されたままになっていた。


「食べないと力が付きませんよ! 骨もスカスカになります! 食べるってことは治療ですから!」

「俺はこんな味のしない飯は食わん」

「しますよ、味。みんなは美味しいって食べてくれています!」

「……」


どうやら松来さんは今日もご飯を食べてくれないらしい。でも点滴ばかりで栄養を摂っていたら退院出来るものも出来なくなってしまう。
公私混同は駄目だけど、仕事が良くないことがあると普段頼れる氷川先生があの状態だから直ぐには復帰出来ない。癒されたい、けど氷川先生のことを考えると自然と種崎先生のことも考えてしまうわけで。

どうしたものかと考えて不意にテーブルの上に置かれているお皿を覗き込むと今日のメインである鮭のちゃんちゃん焼きの半分がなくなっていた。勿論私は食べていない。
ふと顔を上げて松来さんの顔を見ると口元が少し動いているように見えた。


「え、松来さん、今食べました?」

「……腹がちょっと減ってただけだよ」

「食べましたよね! 今食べましたよ!! 良かったです!」

「……」




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