恋する病棟、24時




彼が何か続けて言っていた気がしたが私は耐え切れなくなって荷物を持つもそのまま更衣室へと足を向けた。
種崎先生と食事って、二人きりなのかな。でも氷川先生の口からあの人の名前が出た瞬間に「早く立ち去らなきゃ」って気持ちが溢れ出した。


「(やだなぁ……)」


気持ち悪い。氷川先生はあんなに私のことを大切にしてくれているのに私は彼が女の人といるところを見るだけでドロドロした感情が溢れ出して何が正しいのか分からなくなる。
それが彼との"差"である気がして、それ以上は足を踏入れるのが怖くなった。

私服に着替えて帰路を着く。すると自然と足が駐車場へと向かっていることに気が付いた。
氷川先生の車で家まで送られるの、知らぬ間に習慣になっていたんだけど。

引き返そう、そう思ったとき、目の前から歩いてくる彼女に気が付いた。


「あら、貴女司のところの」

「っ……」


種崎先生は私のことを見るなりその長い髪の毛をなびかせながら近付いてくる。
足が長いから直ぐに私の目の前にまでやってきた彼女はその綺麗に惹かれたアイラインを強調するように微笑んだ。


「少しお話いいかしら」










従業員入り口の花壇に腰掛けていると白衣姿のまま慌てて出てくる氷川先生が目に入った。私が名前を呼んで立ち上がるとそれに気が付いた彼がこちらまで走ってくる。


「すみません、今知穂から連絡が来て」

「……あの、」

「はい?」





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