恋する病棟、24時











「氷川、西原さん見てない?」


塩野先生に声を掛けられて回診を終えた俺は足を止める。


「何、どうかした?」

「いやー、行方が分からないらしいんだよね。どっか行っちゃったみたいで」

「そんなアバウトな」


それに西原と名前を聞いてもパッと顔が浮かんでこない。新しい看護師たちが入ったのは二ヶ月前だった。今年は人数が多いこともあって名前と顔が一致しないことが多い。
それでは困るので覚えようとするのだがいつも名札を見てしまうのが駄目なのかもしれない。


「どうかした?」

「いや、ちょっと気難しい患者さんに怒鳴られちゃったみたいで。その時は耐えたみたいなんだけどそれから姿が見えないってなって」


新人の看護師が患者を前に緊張していつも通りの仕事が出来なくなるのは少なくなかった。いつもよりも辿々しい動きに腹が立ってしまう患者も勿論いる。


「こんなことで新人潰したくないよなー」


頭を掻きながら塩野は困ったように言った。


「直ぐ戻ってくるだろうけど見つけたら軽くフォローしておいて」

「……それ、俺が苦手なの知ってて言ってる?」

「はは、出来たらでいいから」


そう言って立ち去っていく彼を見送りながらふと溜息が出た。自分は他人との干渉をあまり好まない性格だった。特に女性相手にはそれが顕著に出る。



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