恋する病棟、24時
「実は松来さんのことなんだけど」
「あー、了解。私が行くね。代わりにこっち頼める?」
「ありがとー! 一回怒鳴られてからトラウマになっちゃって!」
じゃ!、と私と仕事を交換して去っていく彼女を見送ると私は踵を返してその松来さんの病室へと向かった。
これだけ沢山の人が入院している中で全員が全員素直に従ってくれるとは限らない。そんな患者さん代表が一人いるのだ。
四人一部屋のその病室に入ると入り口左側のベットのカーテンを開く。
「松来さーん、今日もご飯食べてないんですか?」
そう言うとベッドに横になっていた60歳程になる男性がギロリと私を睨んだ。
「こんな不味い飯が食えるかよ」
「不味くないですよ、皆さん美味しく食べてます」
「俺は絶対に食べないからな!」
怒鳴り声を上げる彼に私は負けずと「駄目です!」と声を荒げた。彼は2ヶ月前に入院してからずっとこの調子で病院から提供される食事に口を付けてくれない。それどころか病院の人間にはふつうに怒鳴り声を上げるので看護師たちが怯えてしまっているのだ。
しかしこれも仕事の一環だ。誰かが相手をしないと仕事が回らない。看護師の仕事は助け合いなのだ。
それでもなんで私が、って思う時もあるけど。
結局、氷川先生と話す機会なかったな。
「しかも残業だし」
テーブルの俯せながら涙ながらに漏らす。