BAD & BAD【Ⅰ】




気づいて、しまった。


犠牲者とは、いなくなった大勢の不良だということに。



たかやんが溜め込んできた弱音と、裏切り者の十蔵寺剛と、この違和感が関係していることにも。




たかやんに相談しなきゃよかったかもしれない。




「……じゃあ、行くわ」


「は?」



口をつけていない缶コーヒーを持って立ち上がった私に、たかやんが驚く。


何その、びっくり顔。ウケる。



「話したいことは全部話したし、スッキリしたからもういいや」


「もういいって……」



たかやんは、いつも曖昧な態度を取る。



打ち明けようとして、言わなかったり。


苦しがってるくせに、苦しくないフリをして偽ったり。


聞いてほしいと思ってるのに、ためらってしまったり。



バカだよね、たかやんも。




私は優しくないから、背中なんか押してやんない。


私は鈍くないけど、寄り添って情けなんかかけてやんない。




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