BAD & BAD【Ⅰ】
笑みをこぼす私に、剛は顔を渋めながらポケットからソレ――録音レコーダーを取り出した。
「わざわざ買ったんだね。スマホの録音アプリでもよくない?」
「別にいいだろ」
昨日たかやんが剛のことを努力家だって話してたけど、努力の方向を間違えてないか?
お金持ちのお金の使い方は、庶民とはわかり合えないな。
録音レコーダーを買ったお金で、どれだけのケーキが食べられると思ってるんだ!
無駄遣いするなら、その分だけでもいいから私に貢いでほしい。切実に。
私はソファーから立ち上がって、剛に近寄り、
「貸ーしーてー」
「あっ、ちょ……!」
剛の手から、録音レコーダーを奪った。
手のひらサイズの黒色のソレを、剛に取り戻されないように守りながら熟視する。
「か、返せよ!」
「ディーフェンス、ディーフェンス」
「返せって!!」
ふむふむ、フォルダ内には今まで録音してきたものがあるのね。
それで、さっき録ってきたのは、この1番上のやつかな?