BAD & BAD【Ⅰ】
「アホなのは、私よりあんただよね?」
「俺はアホじゃねぇよ」
「いやいや、その髪型からしてアホだから」
「この髪型かっけぇだろうが!」
「え、あー、う、うん?」
「疑問形にすんな!!」
何この「アホ」のなすりつけ合い。ガキか。
剛って、たかやんと波長が合ってそう。
ツッコミの仕方とか、会話のテンポとか、ちょっとたかやんっぽい。
個性が伝染するくらい、一緒にいたんだろうな。
そんな仲良しな関係を断ち切って、成り下がって。
四面楚歌の策士として動いているのは、誰のため?
「はいはい、髪型かっこいいね」
「棒読みじゃねぇか!」
「それと、ポケットに入ってるソレも、かっこいいよね」
「……っ!?」
深い緑色に彩られた目を丸くした剛は、無意識にソレが入っているポケットに触れた。
――やっぱり、そうなんだ。
「いつから、気づいてやがった?」
「さっきあんたがここを出て行く時に、たまたま見ちゃったんだよね。ソレをポケットに入れてるところ」
私の観察眼、すごいでしょ?拍手したっていいんだよ?