好きになった人は吸血鬼でした。ーさくらの血契1ー【完】

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「――――っ⁉」
 

血が、逆流する。
 

いきなり襲って来た感覚に、黎は胸元を摑んで膝を折ってしまった。
 

場所が院長秘書室だったのは幸いか。


病棟でこんなことになっていたら……。
 

今は誰もいない。院長である澪の父も、澪も、院長秘書も。


土曜日の昼の少し前の時間、黎は一人で雑務をしていたのだ。


(な、んだ? これは……)
 

今までにない感覚に、黎の顔はどんどん険しいものになっていく。
 

血が焼かれているようだ。思わず咳込んでしまう。
 

手で口を押さえようとして、はっとした。

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